「良い提案書」と「通る提案書」の分かれ道

企画営業という仕事をしていると、月に何本も提案書をつくる。デザインも整っていて、数字の裏付けもあって、自分では「これは通るはずだ」と思う提案が、なぜか通らないことがある。逆に、正直そこまで作り込めなかった提案が、驚くほどすんなり通ることもある。何年もこの仕事をしてきて、その差を分けているのは資料の完成度ではないと、最近はっきり感じるようになった。

資料の前に、相手の「困りごと」を眺めているか

提案が通らない時のパターンには、共通点がある。こちらが「伝えたいこと」から企画をつくり始めてしまっているのだ。自社の強み、実績、他社との差別化。もちろん大事な要素だが、それは相手にとっての「答え」であって、「問い」ではない。相手が今、何に困っていて、何を諦めかけているのか。そこを一緒に眺める時間を先に取れているかどうかで、同じ企画書でも刺さり方がまったく違ってくる。

「聞いてもらう」前に、こちらが聞いているか

商談の場で、つい早口で説明したくなる瞬間がある。準備した内容を全部伝えたい、という焦りだ。けれど振り返ると、うまくいった商談ほど、こちらの話す時間は短い。相手の言葉の奥にある本音を拾うために、あえて間を置く。沈黙を怖がらない。「聞く」という行為には技術がいる。相槌のタイミングひとつで、相手が話す量も本音の深さも変わってくる。この感覚は、資料作成のスキルとは別の筋肉として、日々の商談の中でしか鍛えられないと思う。

先に与える人から、選ばれていく

提案の場で自分の利益を急ぐと、たいてい相手にも伝わる。逆に、目の前の相手が本当に助かることを先に考えて動くと、その場では回り道に見えても、結果的に信頼という一番強い営業資産が残る。これは綺麗事ではなく、長く同じ業界にいるほど実感する、わりと現実的な話だ。

企画営業の現場に、正解のフォーマットはない。だからこそ、目の前の相手をどれだけ真剣に観察できるかが問われる。真剣に、緩く、楽しむ。今日もその積み重ねだと思って、次の商談に向かう。

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